ナイト・オブ・ブレイク TIPS:凶刃



 みんな、私を許してくれた。

 でも、信じられない。

 でも、みんなは私の仲間で……

 いやいや、冷静になれ……

 信じられない…

 しんじられない…

 シンジラレナイ



 信じられないから、私の手はこんなに赤く染まってしまったのか?

 違う、違う違う違う!!

 人はそんな簡単に他人を信じられない。例えそれが仲間であっても……

 だからこれは、決して間違ったことではないんだ。

 じゃあ何故?

 何故泣くの?

 涙が止まらないの?


 首を拾い、身体を引きずる。

 隠れ家の中に入れて、はい、おしまい。


 あとは涙を拭って、家に帰ろう。

 一言だけ、お別れを言って。


「…さようなら、沙都子ちゃん。すぐに梨花ちゃんも連れてくるからね?」




 鉄平とリナの事を知っているのはあと3人。魅ぃちゃん、梨花ちゃん…そして圭一くん。

 沙都子ちゃんがいなくなっても、村の人達は探そうとしない。許せない。

 梨花ちゃんがいなくなったらどうなるだろう? きっと村をあげて探す。許せない。

 許せない……

 私の罪を見つけた事が許せない…

 友達なのに…仲間なのに……!!



「あなただったのね……」

「え?」

「しらばっくれなくてもいいわ。…この世界は、あなたが闇に落ちる世界だもの。…沙都子は

あの中にいるのね?」

「……何の事かな、かな?」

「ほら、早くしなさいな。……もう、こんな世界に興味は無い。もう壊れてしまったもの。…少し

いつもと違う展開だけど、あまり変わらない。そう、何も……」

「………あなた、誰? 梨花ちゃんじゃ…ない?」

「ぷっ、あはははは! ……さぁ、誰なのかしら?」

「………」

「さようなら、この竜宮レナ。そしてまた会いましょう。…せめて痛みの残らないよう思い切り

首でも刎ねて頂戴」

「う、うわあああああああ!!」




 何かがおかしい。

 あの梨花ちゃんと同じ姿をしたアレは何だったのだろう?

 アレは本物? それとも偽者?

 分からない。訳が分からない。


 …梨花ちゃんもいなくなってちょっとさびしくなった。

 でも、もう少しでみんなあの中に入れられる。

 そうすればみんな警察に何も言わないようになる。

 だから、もう少し頑張ろう。もう少し…もう少し……




「レナ、本当なの!? 二人を見つけたって!」

「うん、盲点だったよ。レナもよく調べたのに、ゴミ山にいたなんて…」

「もしかして犯人はレナの事を知っている奴かもしれないね。だから敢えてこの場所を…。まぁいい。

それで二人は!?」

「うん……ほら、ここに」

「ここにって、ここはレナの隠れ………ひぃっ!!」

「ね? 居たでしょ、二人とも」

「あ、あああ、あああ……う、うぇぇっ…」

「どうしたの魅ぃちゃん? 大丈夫?」

「ど、どうして……レナはそんな平気な顔をして……」

「なんでかな、かな?」

「ッ!? …も、もしかして……嘘…ねぇ、嘘でしょ? だって、そんな!」

「レナだって、本当はやりたくないんだよ? だってこうするとみんなと遊べなくなっちゃうもの。

でも、喋ってもらいたくないから仕方ないんだよ」

「やだ……レナ…止めて……お願いだから……ねぇ、レナ――――」




 魅ぃちゃん、ごめんね? でも、魅ぃちゃん達がレナの事を知ってしまったからこうするしか

なかったんだよ? だから………だから……




「っ……っく……うぅぅ………」


 枕を涙で濡らす。どうしてか、最近は涙もろい。私はやり遂げているのに、充足感はまるで無い。

 どうして?

 ドウシテ?


 電話が鳴る。お父さんは出かけていていないから私が出る。

 圭一くんだった。私に用事があるらしい。しかも夜、学校へ来てくれという。


 ……行こう。

 行って、圭一くんにも口を塞いでもらおう。

 これで最後。

 本当にこれでおしまい。

 私が気がかりな事はこれで無くなる。


 そして、私はようやく自由になる。もう、誰かに裏切られなくて済むんだ。

 だから行こう。


 待っててね? 圭一くん―――――




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