満月の夜。それは人を狂わせるものなのだろうか。

 人はあの空高く、しかし夜に光り輝く夜空の王に様々な想いを抱く。


 しかしその想いは必ずしも明るいものではない――――


「ハァ、ハァ、ハァ……」

 嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ。

 目の前の光景が信じられない。暗がりには何かが転がっている。

 動悸が止まらない。心臓がドクン、ドクンと止まらない。

 目も開ききっている。

 両手には刀。暗がりの何かからは水のようなものが流れている。

「ッ!」

 大きな音が鳴った。雷だろうか? 辺りが一瞬明るくなった。

 周囲には自分以外に誰もいない。だがあるのは辺り一面に飛び散る

黒い液体のようなもの。

「ハァ、ハァ、ハァ…」

 信じられないのは光景だけじゃない。さっきの……

さっきのは一体何だったの?

「嫌、嫌、嫌ッ!!」

 思い出したくない、思い出したくない!!

 嫌だ、こんなのは嫌だ!!


 そして自分に湧き上がる気持ちも……嫌だ―――――



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